派遣コラム 派遣社員が使える福利厚生は?正社員との違いや条件、手続きを解説
派遣社員として働く中で、「福利厚生は正社員ほど充実していないのでは?」と不安に感じる方は多いでしょう。しかし、法律や制度の改正により、派遣社員もさまざまな福利厚生を受けられるようになっています。
本記事では、福利厚生に関する正社員と派遣社員の違いや、利用できる福利厚生の種類・条件・手続きをわかりやすく解説します。
派遣社員が受けられる福利厚生の基本知識
派遣社員も、条件を満たせば正社員と同じように福利厚生を受けられます。下記では、福利厚生の種類や提供元など、基本的な知識を解説します。
福利厚生の種類と法定・法定外の違い
福利厚生は、法律で義務づけられた「法定福利厚生」と、企業が独自に提供する「法定外福利厚生」に分かれます。法定福利厚生は、社会保険や健康診断、有給休暇などが含まれ、派遣社員も条件を満たせば受けられる制度です。
一方、法定外福利厚生は企業独自のサービスであるため、派遣元や派遣先によって内容が異なり、割引サービスや研修制度など多様な支援があります。
派遣社員と正社員の福利厚生の違い
派遣社員と正社員で福利厚生に不合理な差を設けることは許されませんが、正社員は勤務先のすべての福利厚生を使えるのに対して、派遣社員は場合によって派遣元の福利厚生を適用される点に違いがあります。
正社員と派遣社員の差を解消するために、2020年の労働者派遣法改正で「同一労働同一賃金」の原則が適用され、福利厚生を含めた不合理な待遇差が禁止されるようになりました。これにより、業務内容が正社員と同じであれば、企業は派遣社員向けの法定外福利厚生についても基本的に正社員と同等のものを提供しなければなりません。
ただし、派遣社員の待遇の決め方には、派遣先の従業員と均等な待遇を目指す「派遣先均等・均衡方式」と、派遣元が労使協定に基づいて派遣元独自の制度を適用する「労使協定方式」の2種類があります。どちらを採用しているかは派遣元によって異なり、労使協定方式では派遣先の福利厚生をすべて利用できないケースもあります。そのため、福利厚生について詳細は派遣元に確認することが重要です。
派遣元と派遣先の福利厚生の役割分担
派遣社員への福利厚生の提供は、派遣元と派遣先の双方で分担しています。社会保険や有給休暇などの法定福利厚生は、基本的に派遣元が提供・管理し、費用も派遣元が負担します。
一方、法定外福利厚生は、労使協定方式の場合は基本的に派遣元が提供しますが、派遣先も一部の制度の利用は認めなければなりません。具体的には、社員食堂や休憩室、更衣室などの設備については、派遣社員の利用を認める義務があります。
なお、派遣先が提供する研修やイベントなどの福利厚生に派遣社員が参加できるかは、派遣先の方針によって異なります。
派遣社員の社会保険
派遣社員も、一定の条件を満たせば社会保険に加入することが義務づけられています。健康保険や厚生年金、雇用保険などの制度は、生活や就業を安定させる重要な支えです。
加入条件や対象となる保険の種類は制度ごとに異なるため、自身が加入対象者に該当するかを確認する必要があります。派遣社員が加入できる各種社会保険の概要や条件、注意点については、下記のとおりです。
社会保険の種類と概要
社会保険とは、健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険・介護保険の5つの総称です。これらは、公的制度として生活や安心できる就労環境を支える役割を持ちます。
派遣社員も一定の条件を満たせばこれらの保険に加入する義務があり、医療費の軽減、老後の年金、失業時の給付などの保障を受けることが可能です。特に労災保険は、すべての労働者が対象であり、業務中や通勤中のケガ・事故にも補償が適用されます。
保険ごとに対象条件が異なるため、自分にどの制度が適用されているかを把握しておくことが重要です。
社会保険加入の具体的な条件
派遣社員が健康保険や厚生年金に加入するには、下記の条件を満たすことが必要です。
<健康保険・厚生年金の加入条件>
- 週の労働時間が20時間以上
- 賃金が月額8万8,000円以上
- 2ヵ月を超える雇用見込み
- 学生でない
なお、従業員数51人以上の企業は、これらの条件を満たす労働者を必ず健康保険や厚生年金に加入させる義務がありますが、従業員数50人以下の企業では労働者と企業の合意で加入するかを決めています。
雇用保険は、週20時間以上の勤務、かつ31日以上の雇用見込みがあることが条件です。介護保険は40歳以上の健康保険加入者に義務づけられていて、年齢によって自動的に適用されます。労災保険については、雇用形態や労働時間に関係なく、すべての労働者が対象です。
これらの条件を把握して、自分がどの保険に加入できるのかを判断しましょう。
社会保険に加入できるか確認する際の注意点
社会保険に加入できるかを確認する場合は、企業規模については派遣先ではなく派遣元での従業員数が条件となる点に注意してください。加入手続きも派遣元で行うため、勤務時間や雇用期間なども含めて派遣元に確認しましょう。
もし条件を満たしているのに未加入である場合は、派遣元に手続きを依頼することが可能です。状況によっては、適切に社会保険へ加入できる派遣元を検討し直すことも選択肢のひとつです。
派遣社員の健康診断
派遣社員も、一定の条件を満たせば定期健康診断を受けることができます。これは労働安全衛生法に基づく義務であり、派遣元が実施主体となります。
下記では、健康診断の実施義務や対象範囲、内容、注意点を紹介します。
健康診断の法的義務と派遣社員の対象範囲
労働安全衛生法により、派遣元には、常時使用している労働者や一定の基準を満たす短期労働者などに年1回の定期健康診断を実施する義務があり、この対象には派遣社員も含まれます。
ただし、派遣の登録をしているだけのような場合には、勤務実態がないため、健康診断を受診させる義務はありません。派遣元では、一定の勤務実態がある場合に、健康診断を受診させるようにしているのが一般的です。
どのような勤務実態があれば健康診断を受診させる必要があるのかについては、法律には基準が定められていないため、派遣元によって異なる条件が定められています。例えば、同一の派遣先で6ヵ月以上勤務していて、週40時間以上勤務をしている場合といった形で定めるケースなどが考えられます。自身が健康診断の対象になるかどうかは、派遣元に確認しましょう。
健康診断の内容と受診の流れ
派遣社員の健康診断には、問診、身体測定、血圧測定、尿検査、血液検査、胸部X線検査などが含まれ、検査内容は正社員とほぼ同様です。
受診の案内は派遣元から行われ、医療機関の指定があるケースもあり、指示に従って受診します。診断後の結果は、医療機関から本人に直接通知されます。
費用は基本的に派遣元が負担するため、オプションの検査を追加しないのであれば、自己負担は発生しないのが一般的です。
健康診断を受ける際の注意点
健康診断は、派遣元の案内に従い、指定期間内に必ず受診することが大切です。受診を怠ると派遣元が制度上の義務を果たせないだけでなく、健康管理の機会を逃してしまいます。
検査結果は、自分の体調を見直す良い指標となるため、生活習慣の改善や早期治療につなげましょう。異常が見つかった場合は、早めに医療機関を受診し、必要な対応を取ることが重要です。また、過去の健康診断の結果を保存しておくことで、将来的な体調変化の把握にも役立ちます。
派遣社員の有給休暇
派遣社員は、条件を満たすことで有給休暇も取得できます。下記では、有給休暇が付与される条件や日数の計算方法、実際の申請の流れ、トラブルを避けるための注意点を解説します。
有給休暇の付与条件
派遣社員の有給休暇の付与条件は労働基準法に定められていて、6ヵ月以上継続して勤務し、全労働日の8割以上に出勤している場合に付与されます。
付与日数は勤務年数に応じて増加し、最大で年間20日までです。週の勤務日数や勤務時間が少ない場合は、出勤日数に比例して有給休暇の付与日数も少なくなります。
有給休暇の申請方法
派遣社員が有給休暇を申請する際は、派遣元に連絡し、必要な手続きをとるのが基本です。派遣元が派遣先と調整を行うため、派遣社員が直接派遣先に申請する必要はありません。
申請にあたって理由を伝える義務はなく、法律で認められた権利として有給休暇を取得できます。取得日は業務に支障がない範囲で調整されますが、原則として企業は有給休暇の取得自体を拒否することはできません。
有給休暇取得時の注意点
有給休暇をスムーズに取得するためには、申請方法や連絡先を事前に確認することが重要です。派遣先に直接申請せず、必ず派遣元を通すように注意しましょう。
また、繁忙期や業務への影響を考慮し、早めに希望日を伝えることでトラブルを回避できます。
派遣社員の産休・育休
産前・産後休暇(産休)や育児休業(育休)も、派遣社員が利用できる福利厚生のひとつです。出産や子育てのために安心して働き続けられるよう、法律で制度が整えられています。
下記では、産休・育休の概要と取得条件、利用時の注意点について紹介します。
産休の概要と取得条件
産休は、出産予定日の6週間前から取得できる産前休暇と、出産後8週間の産後休暇で構成されています。派遣社員であっても、出産するすべての女性が利用可能です。
産前休暇の取得は任意ですが、産後休暇の取得は原則義務とされています。ただし産後休暇については、医師の許可があれば、産後6週間で復帰することも可能です。
また、産休中は出産育児一時金や出産手当金が支給され、経済的な支援を受けられます。産休を取得する際は派遣元に申請します。早めに必要書類や手続きを確認することが重要です。
育休の概要と取得条件
育休は子供が1歳になるまで取得でき、派遣社員でも「子供が1歳6ヵ月になる時点で雇用契約が終了することが明らかでない」という条件を満たせば利用可能です。ただし、企業によっては、同一事業主で1年以上雇用されていることや、育休後の雇用継続見込みを求めるケースもあります。
なお、男性も育休を取得でき、育休中の派遣社員には育児休業給付金が支給されます。
産休・育休取得時の注意点
産休や育休を利用する際は、派遣元に申請方法や必要書類を早めに確認し、余裕を持って準備しましょう。準備不足は出産手当金などの受給の遅れにつながる可能性があります。
また、育休中の派遣社員に対して、職場復帰に向けた支援制度や保育施設の紹介といったサポートを提供している派遣元もあります。制度利用に関して不安やトラブルがある場合は、派遣元の担当者や労働相談窓口に相談してください。
派遣元ごとの福利厚生の違いと比較のポイント
派遣社員が利用できる福利厚生の内容は、派遣元によって異なります。社会保険の加入状況や有給休暇の取得状況、健康診断の実施体制などを比較することが重要です。
また、教育・研修制度や資格取得支援制度、育児・介護のサポートといった法定外福利厚生の充実度も、派遣元を選ぶ際のポイントとなります。福利厚生で保養施設を利用できたり、利用料金の割引を受けたりすることができる独自制度が提供されているケースもあるため、確認しておきましょう。
自分のライフスタイルや働き方に合った福利厚生を提供している派遣元を選ぶことで、安心して働き続けられます。登録前に担当者へ福利厚生の詳細も問い合わせ、納得できる派遣元を選ぶことが大切です。
派遣社員も福利厚生を活用して安心して働こう
派遣社員も、社会保険や有給休暇、健康診断、産休・育休などさまざまな福利厚生を受けられます。正社員との待遇差は同一労働同一賃金により縮小され、条件を満たせば多くの制度を利用可能です。
ただし、派遣元ごとに制度内容やサポート体制は異なるため、事前に比較・確認しましょう。自分のライフスタイルに合った派遣元を選び、制度を積極的に活用することで、安心して長く働ける環境を築けます。まずは派遣元に詳細を確認し、自分にとって最適な福利厚生を積極的に活用してください。
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